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2025.11.26 犬や猫の抜け毛・かゆみは皮膚病のサイン?原因と治療を獣医師が解説

愛犬や愛猫が「かゆがって夜も落ち着かず眠れない」「毛が抜けて皮膚が赤くただれている」といった様子を目にして、心配になった経験はありませんか?

犬や猫に起こる皮膚トラブルは、非常に多くの飼い主様が直面する悩みのひとつです。見た目はよく似た症状でも、実際にはさまざまな病気や体内の異常が関係している場合があります。

そのため、「かゆそうだけど元気だから大丈夫」「市販のシャンプーで様子を見てみよう」といった自己判断では、かえって症状を悪化させてしまうことも少なくありません。皮膚病は原因を正しく突き止め、長期的な視点で管理することが大切です。

今回は、犬や猫の「抜け毛」や「かゆみ」といった皮膚の変化の背景に隠れている原因や、診断・治療方法、ご家庭でのケアなどについて解説します。

■目次
1.抜け毛やかゆみの原因
2.抜け毛やかゆみの他によくある皮膚のトラブル
3.自己判断の危険性と検査の重要性
4.治療・管理方法
5.飼い主様にできる日常ケア
6.まとめ

 

抜け毛やかゆみの原因

犬や猫の抜け毛やかゆみの原因は、以下のように複数の要因が複雑に絡み合って症状を引き起こしているケースが多く見られます。

 

<外部寄生虫(ノミ・ダニなど)>

ノミやダニといった外部寄生虫が皮膚に寄生することで、強いかゆみを引き起こします。犬や猫が掻き壊すことで、皮膚に傷ができ、そこから細菌感染が広がるリスクもあります。特にノミアレルギー性皮膚炎では、少数のノミでも激しいかゆみが出ることがあります。

▼犬のノミ・ダニ対策についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<細菌や真菌(カビ)>

皮膚に常在する細菌や、環境中に存在する真菌(カビ)が異常に増殖すると、皮膚に炎症や脱毛、かさぶたなどの症状が出ることがあります。特に湿気の多い季節や、被毛が長く通気性の悪い犬や猫では、感染が進行しやすく注意が必要です。

 

<アレルギー(食物アレルギー・アトピー性皮膚炎)>

食事の中に含まれる特定のたんぱく質や添加物などが原因で、免疫が過剰に反応してしまう状態です。皮膚にかゆみや赤み、慢性的な脱毛が見られることが多く、再発を繰り返す傾向があります。

▼犬のアトピー性皮膚炎についてより詳しく知りたい方はこちら

▼犬と猫のアレルギー性皮膚炎についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<内分泌疾患(ホルモン異常)>

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)など、体内のホルモンバランスの異常によって、皮膚の代謝が乱れることがあります。それにより、毛が全体的に薄くなる、皮膚が黒ずむ、乾燥してハリがなくなるなどの変化が見られます。

▼犬のクッシング症候群についてより詳しく知りたい方はこちら

▼犬と猫の内分泌疾患についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<腫瘍(皮膚腫瘍や内臓腫瘍)>

皮膚の下にしこりができるタイプの腫瘍のほか、内臓の腫瘍がホルモン分泌に影響を及ぼし、皮膚に異常が現れることもあります。目立った症状が少ないこともありますが、かゆみや脱毛、皮膚の厚みや色の変化などが現れることもあります。

▼犬の皮膚の腫瘍についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<複合的な要因が関与している場合>

「アレルギー」「内分泌疾患」「腫瘍」など、複数の疾患が同時に関係しているケースも多くあります。一見すると単なる皮膚炎に見えても、背景にはさまざまな身体の異常が隠れている可能性があるため、表面的な症状だけで判断せず、総合的な診断が重要です。

 

抜け毛やかゆみの他によくある皮膚のトラブル

犬や猫の皮膚からのサインは、抜け毛やかゆみだけに限りません。以下のような変化も、皮膚病の可能性を示す重要なサインです。

 

<赤み>

皮膚が赤くなる場合は、炎症や感染が関与していることが多く、細菌や真菌の増殖が背景にあることも考えられます。

 

<フケ>

皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)の異常や乾燥、栄養の偏りなどが原因で発生します。

 

<ただれや湿疹>

強いアレルギー反応や感染が進行した結果、皮膚が傷んでしまった状態です。

 

<におい>

細菌やマラセチア(酵母菌)の過剰な増殖によって、皮膚から独特のにおいが発生することがあります。

 

このような変化を「少し気になる程度」と軽視してしまうと、慢性化し、治療が長引くことにつながります。また、皮膚は体調や免疫機能のバランスを反映する重要な臓器のひとつです。そのため、小さな異変にも早く気づき、速やかに対応することが、症状の悪化を防ぐためには欠かせません。

 

自己判断の危険性と検査の重要性

「市販のシャンプーを使ったら少し良くなった」「軟膏を塗ったらかゆみが落ち着いた」といった飼い主様の声を耳にすることは少なくありません。しかし、これは一時的に表面的な症状が改善したに過ぎず、根本的な原因は残っていることが多いのです。

犬や猫の皮膚は、外部の刺激だけでなく、前述したように内臓の異常やホルモンの乱れとも深く関係しています。そのため、見た目だけで判断せず、動物病院で検査を受け、抜け毛やかゆみの原因を突き止めることが大切です。

 

動物病院では、以下のような検査を組み合わせて総合的に診断を行います。

◆問診・視診:生活環境、食事内容、症状が出た季節などを詳しく確認します。
◆皮膚検査:顕微鏡を用いて細菌・真菌・ダニの有無を調べます。
◆血液検査・ホルモン検査:内分泌疾患や免疫異常の有無を確認します。
◆アレルギー検査:アレルゲン(原因物質)を特定し、今後の予防につなげます。

これらの検査を通じて、的確な治療方針を立てることができます。

 

治療・管理方法

皮膚病の治療は、その原因によって大きく異なります。

 

<外部寄生虫(ノミ・ダニなど)の場合>

ノミ・マダニ専用のスポット剤や内服薬を用いて、体表から寄生虫を駆除します

 

<細菌や真菌(カビ)の場合>

抗菌薬や抗真菌薬で感染を治療します
薬用シャンプーなどで皮膚を清潔に保ちます

 

<アレルギー(食物アレルギー・アトピー性皮膚炎)の場合>

アレルギー用の療法食に切り替えます
かゆみ止めや抗炎症薬を使用します
・必要に応じて免疫を調整する薬を使用する場合があります

 

<内分泌疾患(甲状腺機能低下症・副腎皮質機能亢進症など)の場合>

ホルモンのバランスを整える薬を使用します
・定期的に血液検査をして経過を確認します

 

<腫瘍(皮膚腫瘍や内臓腫瘍)の場合>

・皮膚腫瘍など明確に取り除ける場合は、外科手術により腫瘍を摘出します
・腫瘍の種類や進行度に応じて、内服薬や注射などの抗腫瘍療法が検討されます

 

<複数の要因が関与している場合>

・原因ごとに治療を組み合わせて行います
・定期的に状態を確認しながら治療を調整します

 

こうした治療は、一時的に症状が落ち着いたように見えても、途中で中断すると再発しやすいという特徴があります。そのため、継続的な通院と自宅ケアを両立させ、愛犬や愛猫の生活の質を保つことが大切です。

 

飼い主様にできる日常ケア

動物病院での治療と並行して、以下のように飼い主様が日常生活の中でできるケアも、皮膚の健康を守るためには非常に重要です。

 

<生活環境を衛生的に保つ>

寝具やクッション、ケージ、カーペットなどはこまめに洗濯・掃除を行い、ダニやハウスダストの発生を抑えましょう。

 

<食事やおやつを見直す>

アレルギーを引き起こしやすい原材料が含まれていないかを確認し、必要に応じて獣医師に相談の上で変更することをおすすめします。

 

<定期的な皮膚のケア>

定期的なブラッシングやシャンプー、保湿クリームによる皮膚ケアは、皮膚の通気性と保湿バランスを整える上で効果的です。特に皮膚トラブルを抱えやすい犬や猫の場合は、過度な乾燥や皮脂の蓄積を防ぐために、定期的なケアを欠かさないようにしましょう。

 

動物病院と連携しながら、ご家庭でのケアもしっかり続けていくことが、皮膚病の早期改善と再発予防につながります。

 

まとめ

犬や猫の抜け毛やかゆみといった皮膚のトラブルは、単なる季節の変わり目による一時的な変化とは限りません。アレルギーや内分泌疾患、さらには腫瘍など、重篤な病気が隠れている可能性もあります。

また、自己判断や市販の薬に頼ってしまうと、症状が一時的に良くなったように見えても、根本的な原因が解決されずに再発や悪化を招くことがあります。そのため、動物病院での正確な診断と継続的な治療を行うことが大切です。

当院では、予防医療から皮膚疾患まで幅広く対応し、地域に根ざした診療を行っています。皮膚病にお悩みの飼い主様は、ぜひ一度ご相談ください。愛犬や愛猫の皮膚の健康を守り、安心して過ごせる毎日を全力でサポートいたします。

 

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