2024.07.01 犬と猫のアレルギー性皮膚炎|皮膚トラブルは要注意!
犬や猫も人間と同じようにアレルギー性皮膚炎を発症する可能性があります。
実際、犬と猫の皮膚トラブルのうち、3割以上はアレルギーが原因とされています。アレルギーは放置しても改善せず、複数のアレルゲンによって症状がさらに悪化することがあります。このようなアレルギー性皮膚炎の治療には、ステロイドを長期間投与して症状を緩和させるケースが多く見られます。
愛犬や愛猫のためにも早期に適切な予防と治療を受けることが重要です。
今回は犬と猫のアレルギー性皮膚炎について症状や治療、予防方法などを解説します。
■目次
1.アレルギー性皮膚炎とは
2.主なアレルギーの種類と原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
アレルギー性皮膚炎とは
アレルギー性皮膚炎は、下記のアレルゲンに反応して引き起こされる皮膚の炎症です。
・花粉
・ダニ
・食品成分
・家庭内のホコリやカビ など
これらのアレルゲンに触れることで、免疫システムがそれを有害であると認識し、過剰に反応して炎症やかゆみを引き起こします。
主なアレルギーの種類と原因
アレルギー性皮膚炎は、アレルゲンによるアレルギー反応が原因で起こる皮膚の炎症を指します。
この疾患は、原因となるアレルゲンの種類によって下記のように分類されます。
<食物アレルギー>
食物に含まれる特定の成分に対するアレルギー反応が原因で発症します。
<アトピー性皮膚炎>
環境中に存在する花粉やハウスダスト、ダニなどのアレルゲンを吸入したり、皮膚を通じて取り込んだりすることで発症します。
<ノミアレルギー性皮膚炎(FAD)>
ノミに咬まれた際、ノミの唾液に含まれるタンパク質に対して過敏反応が起こります。
<接触性アレルギー皮膚炎>
特定のものに触れることでアレルギー反応が引き起こされ、原因となる物質は免疫系が何に反応するかによって異なります。
具体的には、主に下記がアレルゲンとして接触することで症状が現れます。
・シャンプーや洗剤などの薬物
・花粉や植物
・プラスチック製の食器やおもちゃ
・首輪
・カーペット など
既にアトピー性皮膚炎を発症している場合、「接触性アレルギー」を発症しやすいといわれています。
アレルギー体質の発生には、遺伝的要因や生後間もない時期の環境など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられていますが、これらの詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。
症状
アレルギー性皮膚炎によって引き起こされる症状には、下記のようなものがあります。
<皮膚に赤みが出る>
炎症によって皮膚が赤くなり、敏感になることがあります。
<慢性的な皮膚のかゆみ>
最も一般的な症状で、絶えず掻きむしったり、舐めたりする原因となります。
<脱毛>
慢性的なかゆみと掻きむしりにより、毛が抜けることがあります。
<皮膚の黒ずみや肥厚>
長期的な炎症により、皮膚が黒ずんだり厚くなったりすることがあります。
<くしゃみ・鼻水>
アレルギー反応によって引き起こされ、特に呼吸器系のアレルギー症状として現れます。
<結膜炎>
目の炎症による赤みや目やにが生じます。
<外耳炎>
耳道の炎症により、かゆみや痛みが引き起こされます。
これらの症状は、皮膚のバリア機能が損なわれることで、さらに他の皮膚疾患(膿皮症やマラセチア性皮膚炎など)を引き起こすリスクが高まります。
外耳炎の症状は、下記の体の特定の部位に現れます。
・目の周り
・口の周り
・足先
・脇
・股 など
また、接触性アレルギー皮膚炎の場合は、アレルゲンと直接接触した部位に限定して症状が現れます。
診断方法
アレルギー性皮膚炎の診断は複雑で、正確な原因を突き止めるためにはさまざまな検査が必要となることがあります。
主に以下の検査方法が用いられます。
<血液検査>
血液中に特定のアレルゲンに対する抗体(特にIgE抗体)が存在するかを調べます。
この検査により、どのアレルゲンに反応しているかを特定できます。
また、リンパ球反応検査も行われることがあり、アレルゲンに対する免疫系の反応をより詳細に調べます。
<皮膚掻爬検査(スクレイピング検査)>
皮膚の一部を擦り取る(スクレイピング)ことで、毛穴の奥に寄生している可能性がある毛包虫などを検出します。
採取したサンプルは顕微鏡で観察され、寄生虫の有無が確認されます。
この検査では皮膚を強く擦る必要があるため、少量の出血が生じることがありますが、寄生虫の検出には非常に有効的な方法です。
<除去食試験>
食物アレルギーを特定するための検査です。
この試験では、アレルゲンを含まない特定の食事を与え、症状が改善するかどうかを観察します。症状が改善すれば、その食事に含まれていない成分がアレルゲンである可能性が高いと考えられます。
当院では、除去食試験を1種類に絞って実施しております。実際に獣医師が愛犬や愛猫にあった食事内容をお伝えし、ご家庭で試していただきます。もし、症状に変化が見られない場合は、別の食事に切り替えていただく方法を行います。
また、アレルギーを特定できた場合、当院を通じてフードを購入される飼い主様が多いです。
治療方法
アレルギー性皮膚炎の治療は、アレルゲンの回避、適切なスキンケア、そして薬によるかゆみの緩和が中心となります。
治療方法は、アレルギーの原因に応じて異なります。
<食物アレルギー>
食物アレルギーの原因を特定し、そのアレルゲンを含まないフードに切り替えることで、症状の改善が見られます。おやつや人間の食べ物を与えると、症状が再発する可能性があるため、食事療法中は療法食とお水だけを与えるようにしましょう。
<アトピー性皮膚炎・接触性アレルギー皮膚炎>
原因となる物質が特定できれば、その物質との接触を回避することで症状が改善する場合があります。症状をコントロールするには、抗生剤やステロイド剤を使用します。
さらに、シャンプー療法は皮膚を清潔に保ち、炎症を抑え、かゆみを軽減するのに有効です。
<ノミアレルギー皮膚炎>
ノミ駆除薬を用いてノミを駆除します。かゆみが強い場合には、ステロイド剤を使用してかゆみを抑えることもあります。
アレルギー性皮膚炎は、早ければ2〜3日で回復が見られることもあります。また、赤みや炎症を抑えるために特化した薬を使用するのが有効であるとされています。
予防法やご家庭での注意点
ご家庭では、アレルゲンの蓄積を防ぐために定期的な掃除や空気清浄機の使用、ノミの駆除を行うことが効果的です。
また、バランスの取れた食事で免疫力を強化し、専門のスキンケア製品を使って皮膚の乾燥や刺激を避けることも重要です。
まとめ
アレルギー性皮膚炎は、一度発症すると完全に治癒するのが難しく、犬や猫の生活の質に大きな影響を与えます。
この症状を管理するためには、かゆみをいかにうまくコントロールできるかにあります。
愛犬や愛猫の皮膚の健康を守るために、できることから積極的に取り組みましょう。
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