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2025.11.19 犬や猫の咳は見逃せないサイン|原因別に考える病気と正しい対処法

愛犬や愛猫の「咳が止まらない」「ゼーゼーとした呼吸音が聞こえる」といった様子を見て、心配になった経験はありませんか?咳は犬や猫の体調不良のサインとして、飼い主様が最も気づきやすい症状のひとつです。

一見するとただの風邪のように思われがちですが、実は咳の背景に「心臓病」や「気管支炎」などの重大な病気が隠れていることもあります。また、市販薬を使ったり、自己判断で様子を見たりすると、かえって症状が悪化する可能性もあるため、早めに動物病院で適切な治療を受けることが大切です。

今回は犬や猫の咳について、見逃せないサインや原因、診断方法、治療方法などをご紹介します。

■目次
1.犬や猫の咳とは?
2.咳の主な原因
3.自己判断の危険性
4.検査と診断方法
5.治療方法
6.まとめ

 

犬や猫の咳とは?

咳は、体が異物や炎症を排除しようとする自然な防御反応のひとつです。犬や猫が咳をする場合、その音の種類やタイミングによって、原因となっている疾患をある程度予測する手がかりになります。

たとえば、「ケホッケホッ」といった乾いた咳や、「ゼーゼー」と痰が絡むような湿った咳があるほか、咳が出る時間帯にも注目することが大切です。夜間や運動後、食後に咳が目立つ場合は、それぞれ異なる病気が関与していることがあります。

つまり、咳はただの音ではなく、体の内側から発せられる重要なSOSサインなのです。

 

咳の主な原因

犬や猫の咳の原因は大きく分けて、以下の2つがあります。

 

<心臓からくる咳(循環器系の病気)>

代表的な疾患として「僧帽弁閉鎖不全症」などの心臓病があります。特に中高齢の犬でよく見られ、心臓が大きくなることで気管を圧迫し、咳が出やすくなります

また、「老犬が夜中に咳をする」というケースでは、「心臓病」が関与している可能性が高く、早急な対応が求められます。さらに進行すると、呼吸困難を起こしたり、舌が紫色に変色するチアノーゼといった症状が見られたりするようになり、命に関わる危険な状態に陥ることもあります。

▼犬と猫の心筋症についてより詳しく知りたい方はこちら

▼犬の僧帽弁閉鎖不全症についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<気管・肺からくる咳(呼吸器系の病気)>

「気管虚脱」や「気管支炎」「猫喘息」などといった呼吸器が原因となる咳も多く見られます。特に猫は呼吸器疾患が目立ちやすいため、注意が必要です。

なお、ゼーゼーとした喘鳴音や、痰が絡むような咳が続く場合は、「肺炎」や「腫瘍」といったより深刻な病気が隠れている可能性もあります。慢性的に咳が続いている場合には、早期の検査が欠かせません。

 

自己判断の危険性

咳は一見すると単純な症状のように思えますが、「心臓が原因の咳」と「呼吸器が原因の咳」では、治療法がまったく異なります。そのため、飼い主様が自己判断で対応するのは非常に危険です。

たとえば、心臓病による咳に抗生物質を使っても改善は見られず、呼吸器が原因の咳に心臓の薬を使っても意味がありません。さらに市販の咳止めや民間療法で一時的に咳が落ち着いたように見えても、根本的な病気は進行してしまう恐れがあります。

そのため、同じ咳という症状でも、原因が異なれば治療法は真逆になります。「咳を抑える」ことではなく、「なぜ咳が出ているのか」を正しく診断することが、重要です。

 

検査と診断方法

咳の原因を正確に突き止めるためには、動物病院での詳しい検査が必要です。まずは、飼い主様から以下の情報を詳しく伺います。

・咳が出る時間帯
・頻度
・持続時間
・発作が起きたのか など

 

なお、診察時には、咳の様子を撮影した動画を持参していただくと、より正確な診断の手助けになります。そのうえで、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

聴診:心音や呼吸音を確認します。
胸部レントゲン検査:心臓や肺の状態を確認します。
心臓超音波検査:心臓の構造や機能を評価します。
血液検査:全身状態や感染の有無を確認します。

 

これらの検査を通じて、心臓病なのか呼吸器疾患なのかを見極めることが、適切な治療につながります。

 

治療方法

咳の治療は、「症状を抑えること」ではなく「原因に対処すること」が目的です。以下のように原因に応じて治療法は異なります。

 

<心臓病が原因の場合>

心臓の働きを助ける薬:ACE阻害薬などを使用します。
利尿剤:肺への水分貯留を防ぎます。
食事療法:塩分制限や心臓に優しい栄養設計を行います。

心臓の負担を軽減する治療を中心に、症状の進行を抑えていきます。

 

<呼吸器が原因の場合>

抗生物質:細菌感染がある場合に投与します。
気管支拡張薬:気道を広げて呼吸を楽にします。
吸入療法:薬剤を直接気道に届けます。
ステロイド治療:猫喘息などで炎症を抑えるために使用します。

これらの治療により、呼吸器の炎症や感染をコントロールしていきます。

 

<その他のケース>

異物の誤飲や腫瘍が咳の原因である場合には、外科的な処置が必要になることもあります。いずれの場合も、咳だけを止める対症療法では根本的な解決にはなりません。原因に合わせた正確な治療を行うことが大切です。

▼犬や猫の外科手術についてより詳しく知りたい方はこちら

 

まとめ

犬や猫の咳はよく見られる症状のひとつですが、その背後には心臓病や呼吸器疾患など、命に関わる重大な病気が隠れていることも少なくありません。特にシニア期の犬や猫の「夜中の咳」や「ゼーゼーとした呼吸」は、早急な受診が必要なサインです。

また、飼い主様が自己判断で対応してしまうと、かえって病気を悪化させてしまうこともあります。そのため、咳が気になる場合は、なるべく早く動物病院を受診し、専門的な検査と治療を受けることが大切です。

大阪府貝塚市にあるクローバー動物病院では、予防医療から一般診療、さらにセカンドオピニオンまで幅広く対応しています。愛犬や愛猫の「咳が気になる」「心臓病かもしれない」と感じられた飼い主様は、ぜひお気軽にご相談ください。私たちが、犬や猫の健やかな毎日をサポートいたします。

 

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