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2025.11.12 【食べているのに痩せる】犬や猫の体重減少で考えられる病気|獣医師が詳しく解説

愛犬や愛猫が「しっかり食べているはずなのに、なんだか痩せてきたような気がする…」と感じたことはありませんか?

こうした異変を加齢による影響や、季節的なものだと考えて様子を見る飼い主様も少なくありません。

しかし、食欲があるにもかかわらず体重が減少するという状況は、健康になにかしらの問題が生じているサインである可能性が高く、放置すると重大な病気を見逃してしまうこともあります。

特に高齢の犬や猫では、体重の変化が病気の初期症状として現れるケースが多いため、早期に動物病院を受診して、適切な治療を受けることが大切です。

今回は、犬や猫の体重減少の背景にある病気や、注意すべきポイントなどについて解説します。

■目次
1.正常な体重減少と異常な体重減少の違い
2.体重減少を引き起こす主な病気
3.注意すべき症状の組み合わせ
4.動物病院での診断と検査
5.受診前に準備しておくこと
6.まとめ

 

正常な体重減少と異常な体重減少の違い

犬や猫の体重は、年齢や生活環境、運動量、さらには季節の変化によってもある程度の増減があるため、すべての体重変動が問題とは限りません。たとえば、暑さで食欲が落ちがちな夏場や、成長期の若い個体では、自然な範囲での体重変化が見られることがあります。

しかし、短期間で急激に体重が減少したり、見た目が痩せこけて骨が浮き出てきたり、抱き上げたときに「軽くなった」と感じるような場合には、異常な体重減少を疑いましょう。特に、明確な理由がないまま体重の変化が見られる場合には、何らかの病気が関与している可能性が高いです。

そのため、日常的に「普段の体重」を把握しておくことがとても重要です。定期的な体重測定を習慣にしておくことで、異変に早く気づくことができ、早期診断・早期治療につながります。

 

体重減少を引き起こす主な病気

犬や猫の体重減少の背後には、さまざまな病気が潜んでいる可能性があります。注意すべき病気には、主に以下が挙げられます。

 

<内分泌疾患>

ホルモンバランスが崩れることで代謝が異常をきたし、体重が減少する病気です。

▼犬と猫の内分泌疾患についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<糖尿病>

犬にも猫にも多く見られる病気です。インスリンというホルモンが不足したり、適切に機能しなかったりすることで、体内のエネルギー利用がうまくいかず、筋肉や脂肪が分解されて体重が減少します。初期では食欲があることが多いため、見過ごされやすい点に注意が必要です。

▼犬や猫の糖尿病についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<甲状腺機能亢進症>

特に猫に多く見られ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が過剰に活発になります。その結果、食欲は増すのに体重が減っていくという特徴的な症状が現れます。

 

<副腎皮質機能低下症(アジソン病)>

主に犬に見られる病気で、副腎ホルモンが不足することで、全身の機能が低下し、慢性的な体重減少や元気の消失が起こることがあります。

 

<消化器疾患>

消化管や肝臓、膵臓に異常があると、食事からの栄養吸収がうまくいかなくなり、体重が減少します。

 

<慢性腸炎>

腸の慢性的な炎症によって、栄養の吸収効率が低下し、食べていても体に必要な栄養が行き渡らず体重が減少してしまいます。

 

<膵炎>

膵臓の炎症が長期化すると、消化酵素の分泌が妨げられます。それにより、脂肪やたんぱく質の分解が不十分になり、体重減少に至ることがあります。

 

<肝疾患>

肝臓の機能が低下すると、代謝や栄養の利用に支障が出て、結果的に体重が減少することがあります。

 

<腎臓病>

特にシニアの猫で多く見られるのが慢性腎臓病です。腎臓の機能が低下すると老廃物の排出がうまくできず、食欲が低下して体重が減少します。また、尿中にたんぱく質が漏れ出すことも筋肉量の減少につながり、さらに痩せてしまう要因となります。

▼猫の腎臓病についてより詳しく知りたい方はこちら

 

<腫瘍性疾患(がん)>

腫瘍による代謝の異常や、体内のエネルギーの過剰消費、栄養吸収の妨げなどが複雑に絡み合い、体重が急速に減少することがあります。また、腫瘍が胃腸や肝臓、膵臓などにある場合は、消化や吸収に直接影響を及ぼすこともあります。進行するまで明確な症状が出にくい点にも、注意が必要です。

 

注意すべき症状の組み合わせ

体重減少だけでなく、以下のような症状と併発している場合は、重篤な病気が進行している可能性があるため、早めの受診が必要です。

 

<多飲多尿>

糖尿病や慢性腎臓病の代表的な症状です。飲水量が急に増えた、尿の量や回数が多くなったといった変化が見られたら、注意が必要です。

 

<食欲旺盛>

特に猫の甲状腺機能亢進症や糖尿病の初期症状で見られます。どんなに食べても体重が減少します。

 

<嘔吐・下痢>

消化器系の病気の可能性があります。栄養吸収が阻害されるため、体重が落ちやすくなります。

 

<活動性の低下>

腫瘍性疾患や内臓疾患などにより、体力が落ちている可能性が高いです。普段より元気がない、動きたがらないといった変化が見られたら、早急な診察が必要です。

 

動物病院での診断と検査

動物病院では、まず詳しい問診と身体検査を行い、その後に必要に応じて以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

血液検査:ホルモンバランスや腎機能、肝機能などを調べます。
尿検査:糖尿病や腎臓病の診断に役立ちます。
画像検査(レントゲンや超音波など):内臓の形や腫瘍の有無を確認します。

体重減少の原因は単一ではなく、複数の要因が関係していることもあるため、全身的な評価が必要になります。また、病気によっては、追加の専門的検査や定期的なモニタリングが求められる場合もあります。

 

受診前に準備しておくこと

動物病院での診察をスムーズに進めるために、事前に以下の情報を整理しておくと、診断の助けになります。

✓体重の変化が見られた時期とその程度(いつから、どのくらい減ったか)
✓食事の量や食欲の変化
✓飲水量や排尿・排便の様子
✓嘔吐や下痢、元気の有無など他の症状
✓普段の様子を記録した写真や動画
✓体重の記録があれば、日付とともにまとめておく

こうした情報を時系列で把握しておくことで、獣医師がより正確な診断を行いやすくなります。ほかにも、日常的にスマートフォンなどで様子を記録しておくと、非常に有効です。

 

まとめ

犬や猫の体重が減っていくのを「年齢のせい」「食欲があるから大丈夫」と見過ごすことはとても危険です。特に、食欲があるのに痩せていくという状態は、何らかの異常が起きているサインである可能性が高く、病気の早期発見のチャンスを逃してしまうことにもつながります。

そのため、飼い主様の観察力と気づきが、愛犬や愛猫の健康を守る第一歩です。気になる体重減少が見られた際は様子を見ず、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

当院では、体重減少に関するご相談や精密な検査にも対応しております。分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

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大阪府貝塚市の動物病院「クローバー動物病院」
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