2023.12.22 猫の歯肉口内炎について|痛みが強くてフードが食べられない
猫の歯肉口内炎は別名、難治性口内炎ともいい、治療が非常に難しい疾患の1つです。
口内炎は誰でも1度は経験したことがあると思いますが、1つあるだけでも痛みがつらく、食事が苦痛になりますよね。猫の歯肉口内炎は炎症が口全体に広がったり、口腔粘膜が腫れあがったりして、さらに症状が重くなることがあります。
また、歯肉口内炎は中高齢の猫によくみられるのですが、若齢(1歳未満)での発症もしばしばみられます。
そこで今回は猫の歯肉口内炎について解説していきます。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
猫の歯肉口内炎のはっきりとした原因は解明されていませんが、関与が強く疑われている因子としては下記のとおりです。
・ウイルス感染(カリシ・ヘルペス・エイズ・白血病など)
・歯石の蓄積、歯周病(3歳以上の猫のうち、80%以上が歯周病にかかるといわれています)
・免疫異常
・栄養不良
・内科的疾患(腎臓病・糖尿病など)
などが挙げられます。場合によっては複数の要因が絡み合っているパターンもあります。
症状
強い痛みを伴うことから、硬いものを食べたがらなくなる、よだれが増える、歯肉が真っ赤になる、口から出血する、などの症状がみられます。
重度の場合は舌や口腔粘膜全体に潰瘍ができ、痛みで食事ができず、水も飲めなくなり、脱水や衰弱を引き起こすこともあります。
診断方法
主に問診と、口の中の視診により診断されます。
ウイルス感染の有無が本疾患の発症に関与していることがあるため、エイズ・白血病の検査を行うことがあります。
その他、血液検査による全身状態の確認や、歯科用レントゲンを撮影することもあります。
治療方法
治療には大きくわけて内科的治療と外科的治療があります。
軽度であれば、内科的治療でステロイドや免疫抑制剤、抗生物質、サプリメントなどを用いて炎症のコントロールや痛みの緩和を行います。
ステロイドは治療初期では反応が良好ですが、徐々に効かなくなってくることが多く、また長期投与の副作用として肝疾患や糖尿病を発症する可能性があるため、注意が必要です。
しかし内科的治療だけでは症状の改善が乏しい場合には、外科治療で麻酔をかけて歯垢・歯石の除去や全臼歯抜歯(すべての奥歯の抜歯)、もしくは全抜歯を行います。
抜歯をして歯がなくなることで約8割~9割の猫で症状の改善がみられるといわれています。
なお、外科的治療を行う際には全身麻酔が必要であるため、持病があったり高齢であったりすると、躊躇される方も少なくありません。そのため、当院では少しでも飼い主様や大切なご家族のご不安を減らせるように事前にしっかりとご説明と術前検査を行ったうえで全身麻酔を行っております。
予防法やご家庭での注意点
猫の歯肉口内炎は発症機序が不明な部分も多く、発症を完全に防ぐことは困難です。
しかしウイルス感染はワクチンや室内飼いで予防できますし、歯周病は日頃のデンタルケアで防げるため、何もできないわけではありません。
また重症になる前に治療を始めた方が、高い効果を期待できます。そのため、ご家庭の愛猫のよだれが増えたり食欲が低下したりすることがあれば、一度動物病院でお口の中をチェックしてもらいましょう。
まとめ
当院では、10歳頃で手術を受けるのをあきらめてしまい、年齢を重ねてから大きなトラブルになっていることをよく見かけます。ご高齢で迷われている方も、診察、検査、ご相談のうえ、その子に合った治療や手術をご提案させていただきます。
少しでも気になることがあればまずは1度当院までご相談ください。
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