2023.12.22 犬や猫の根尖膿瘍について|歯の根に膿が溜まる病気
根尖膿瘍とは歯の根(根尖部)に膿が溜まる病気です。歯石が重度に付いて歯周病になっている犬や猫によくみられ、特に中高齢に多い疾患です。
病変が歯根部にあるため、進行してからでないと気がつくことの難しい病気なので、ご家庭の愛犬や愛猫に食欲不振や食べる様子の異変がみられたら根尖膿瘍を疑ってみてもいいかもしれません。
そこで今回は犬や猫の根尖膿瘍について解説していきます。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
犬や猫の根尖膿瘍の原因で一番多いのは、歯周病の悪化によるものです。
歯周病は、歯垢の中の細菌が原因となり歯肉が腫れ(歯肉炎)、歯を支えている歯周組織が破壊(歯周炎)されます。
歯石の中には多くの細菌が存在し、これらの細菌が血液を介して細菌が広がると、歯槽骨が溶け、根尖膿瘍が形成されます。
また、歯が折れて歯髄(歯の中心部)が露出すると、歯髄の細菌感染が根尖部に広がることもあります。
症状
初期症状は、痛みから硬いものを食べたがらなくなる、片方の顎ばかりで噛む、食べにくそうにするなどの症状がみられます。
進行してくると頬(特に目の下)が腫れる、膿瘍部分の頬の皮膚が破れて血や膿が出るといった症状が現れます。
さらに炎症が進行して歯の周囲の組織が溶けると、顎骨の骨折が起こりやすくなります。特に小型犬の下顎でみられることが多いです。
頬や口唇の周りにかさぶたができることが多いため、皮膚病と間違われやすく、注意が必要です。
診断方法
まずは視診で病変部や口内の状態を診察し、歯石の付き具合や、口臭の程度、歯や口の周りの腫れと炎症を注意深く観察します。
根尖膿瘍は歯の根っこで起きているため、確定診断のためには麻酔下での歯科用レントゲンの撮影が必要です。
しかし多くは歯周病の進行具合や病変部の状態からおおむね診断できます。
治療方法
麻酔をかけて、根尖膿瘍を起こしている歯を抜きます。抗生剤や消炎剤を用いて一時的に腫れを引かせることはできますが、歯石がついて歯周病を起こしているままだと、何度も繰り返します。
そのため、抜歯と同時に全体的な歯石除去を行いクリーニングし、他に感染を起こしている歯があればそれらも抜歯します。
予防法やご家庭での注意点
日々のデンタルケアにより、極力歯石がつかないようにすることが大切です。どうしても歯みがきができない子や、歯みがきしていても歯石がついてきてしまう子は、高齢になって麻酔のリスクを抱える前に一度歯石除去を受けておくとよいでしょう。
まとめ
お家で歯を磨くのはもちろんのこと、歯石が付着していないか、歯肉炎や歯周炎は大丈夫かを動物病院で定期的にチェックしてもらうことも大切です。
当院では、診察、検査、などその子に合った治療や手術をご提案させていただきます。高齢で手術をあきらめてしまう方も多く見られますが、そのまま年齢を重ねてしまうともっと大きなトラブルになることも少なくありません。少しでも気になることがあれば1度当院までご相談ください。
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