2025.11.12 初めての発作で慌てないために|犬や猫のてんかん発作の基礎知識と飼い主がすべきこと
ある日突然、愛犬や愛猫が「けいれんを起こして倒れてしまった…」といった状況に直面すると、驚いてどうしていいのか分からなくなってしまうものです。
「今すぐ病院に行くべき?」「どこか怪我をしていないか?」と不安が募り、冷静に行動することは難しいかもしれません。
しかし、てんかん発作が起きたときには、飼い主様が落ち着いて対応することが何よりも大切です。犬や猫のてんかん発作は比較的よく見られる病気であり、適切な知識を身に着けておくことで、万が一のときにも安心して行動することができます。
今回は犬や猫のてんかん発作について、基礎知識や発作時の正しい対処法、動物病院での診断や治療方法などを解説します。
初めての発作で慌てないためにも、ぜひ最後までお読みください。

■目次
1.てんかん発作ってどんな病気?
2.発作の症状と種類
3.発作が起きた時の応急処置と注意点
4.動物病院での診断と検査
5.治療方法
6.まとめ
てんかん発作ってどんな病気?
てんかん発作とは、脳の神経細胞が異常に興奮し、電気信号の乱れによって繰り返し発作が起こる病気です。てんかん発作は一度きりの発作ではなく、繰り返し起こる場合に診断されます。
犬や猫のてんかん発作には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
<特発性てんかん(先天性)>
明確な原因は見つからないものの、遺伝的な要因が関係していると考えられています。主に若齢の犬に多く、ボーダー・コリーやビーグル、ジャーマン・シェパード、トイ・プードルなどでよく見られます。
<構造的てんかん(後天性)>
脳腫瘍や脳炎、外傷、または肝臓や腎臓の病気などが原因となって発作を引き起こすタイプです。特に猫の場合には、この続発性てんかんが多く、高齢の猫で発症しやすい傾向があります。
どちらのタイプであっても、早期の理解と適切な対応が犬や猫の命を守ることにつながります。
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発作の症状と種類
犬や猫の発作には以下のようにいくつかのタイプがあり、症状の現れ方や重症度は個体によって異なります。
<全身性発作>
突然意識を失い、全身の筋肉が硬直したりけいれんしたりするタイプの発作です。口から泡を吹いたり、大量によだれを垂らしたりすることがあります。また、無意識のうちに排尿や排便を伴うこともあります。
<部分発作>
体の一部、たとえば顔の筋肉や前肢などがピクピクとけいれんするような軽度の症状が見られます。なかには、空中を噛むような仕草や、同じ場所を何度も回るなど、異常な行動として現れる場合もあります。部分発作の症状は分かりにくく、見過ごされやすいため注意が必要です。
■発作の前後の様子
発作の前後には、以下のような特徴的なサインが見られます。
<発作の前兆(前駆症状)>
発作の直前には、いつもと違う様子が見られることがあります。たとえば、急に甘えてきたり、落ち着きなく歩き回ったり、物陰に隠れようとしたりする行動が挙げられます。これらのサインに気づいた際は、周囲の危険物を除けたり、安全なスペースを確保したりしましょう。
<発作後の様子>
発作が終わった後もしばらくはぼんやりとしていたり、ふらついて歩けなかったり、一時的に視覚に障害が出ることもあります。また、極端な食欲や喉の渇きが見られるケースもあります。こうした状態は「回復期」と呼ばれ、個体差はありますが、通常は時間とともに落ち着いていきます。
発作が起きた時の応急処置と注意点
突然発作が起きた際、まずは飼い主様が落ち着いて対応することが大切です。混乱して手を出してしまうと、意図せず噛まれてしまったり、犬や猫をさらに刺激してしまったりする可能性があります。
発作時の対応として押さえておきたいポイントは以下の通りです。
・階段の近くや家具の角などの危険な場所から離す
・発作が始まった時間を確認し、持続時間を記録する
・可能であればスマートフォンなどで発作の様子を撮影する
・口に手や物を入れようとしない
・無理に体を押さえつけない
・大声で名前を呼ぶなど、刺激を与えないようにする
特に注意が必要なのは、発作が5分以上続いている、あるいは短い間隔で何度も発作が起こるといった場合です。これらは「重積発作」または「群発発作」と呼ばれ、命に関わる危険な状態です。すぐに動物病院へ連絡し、早急に受診してください。
動物病院での診断と検査
てんかん発作の診断には、まず飼い主様からの詳細な情報が不可欠です。発作がどのような状況で起きたのか、持続時間や回数、前後の行動などをできるだけ正確に記録しておくことが大切です。その後、以下のような検査を行います。
・血液検査:内臓疾患や感染症を除外します。
・神経学的検査:反射や感覚などをチェックします。
・頭部のCT検査・MRI検査:脳腫瘍や炎症、構造異常の有無を確認します。
特に猫では、脳の疾患がてんかん発作の原因となっているケースが多いため、画像診断が重要になる場合があります。
治療方法
てんかん発作の治療では、発作のタイプや頻度、重症度に応じて治療方針が異なりますが、
<原発性てんかんの場合>
主に抗てんかん薬による継続的な管理が基本となります。よく使用される薬にはフェノバルビタールやゾニサミドなどがあり、効果が現れるまでには数週間を要することがあります。
また、治療の初期には、眠気やふらつきなどの副作用が出ることもありますが、多くの場合は時間とともに軽減していきます。また、薬の量や種類は犬や猫ごとに異なるため、獣医師の指示に従って調整することが重要です。
さらに、以下のような点にも注意が必要です。
・定期的な血液検査によって薬の血中濃度や肝機能などを確認する
・発作の状況を記録する「発作ダイアリー」をつける(再診時の参考になります)
・ストレスの少ない生活環境を整える(急な環境変化や大きな音を避ける)
・食事や運動の時間をなるべく一定に保つ
・安心できる居場所を用意する
<続発性てんかんの場合>
原因となる疾患の治療が必要です。たとえば脳腫瘍が見つかった場合には、その治療が最優先となります。
てんかん発作は「完治」する病気ではないことが多いですが、適切に治療と管理を続けることで、犬や猫と穏やかで安定した日常生活を送ることが十分に可能です。
まとめ
犬や猫の突然てんかん発作は、事前に正しい知識を持っておくことで、いざというときにも落ち着いて対処することができます。
てんかん発作が起きた際には、まずは飼い主様ご自身が冷静になること。そして安全確保や発作の記録、必要に応じた動物病院への受診など、落ち着いた行動が愛犬や愛猫の命を守ることにつながります。
てんかん発作と診断された場合でも、継続的な治療と生活環境の工夫によって、発作をコントロールしながら穏やかに暮らすことが可能です。
当院では、てんかん発作の診断から治療、日常管理までをしっかりとサポートしております。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
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大阪府貝塚市の動物病院「クローバー動物病院」
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