2024.10.18 愛犬のリンパ腫を理解する|早期発見と治療法のガイド
リンパ腫は犬に発生する腫瘍の中でも、発生率が高いとされています。特に6〜8歳頃の中高齢の犬で見られることが多く、全身に分布するリンパ球が腫瘍化する病気です。リンパ腫にはさまざまな種類があり、性質や進行具合が大きく異なります。
今回はリンパ腫について、原因や治療方法、予防と早期発見の重要性などについて解説します。
■目次
1.犬のリンパ腫とは?
2.リンパ腫の種類
3.リンパ腫の原因と危険因子
4.リンパ腫の症状と早期発見のポイント
5.リンパ腫の診断方法
6.リンパ腫の治療方法
7.リンパ腫の予後と生存率
8.リンパ腫の予防と早期発見の重要性
9.まとめ
犬のリンパ腫とは?
リンパ腫とは、免疫機能を担うリンパ球が腫瘍化する病気です。リンパ腫のタイプによって発生する部位は異なりますが、全身のリンパ節、腸、胸腔内、皮膚などに発生することがあります。
リンパ腫の種類
リンパ腫の種類は主に以下が挙げられます。
<多中心型リンパ腫>
最も多く見られる腫瘍です。耳の下や脇の下、内股、膝の裏側にある体表リンパ節が腫れることが特徴です。症状としては、元気消失や食欲不振など特異的ではないものが多く見られます。
<消化器型リンパ腫>
腹腔内の消化管リンパ組織が腫れます。これに伴い消化器症状(下痢・嘔吐・食欲不振など)が見られます。
<縦隔型リンパ腫>
左右の肺の間にある「縦隔」という胸部の領域に腫瘍が形成されます。症状としては、咳や呼吸困難などが見られます。
<皮膚型リンパ腫>
皮膚炎のような症状が現れる、比較的稀なタイプのリンパ腫です。
リンパ腫の原因と危険因子
リンパ腫を引き起こす原因は完全には解明されていませんが、考えられる要因として遺伝的要因(特定の遺伝子変異や犬種)、環境要因(発がん性物質への接触など)が挙げられます。特に中高齢の犬で多く見られます。
リンパ腫の症状と早期発見のポイント
愛犬に以下の症状が見られたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
<リンパ節の腫れ>
耳の下、脇の下、内股、膝の裏側などにある体表リンパ節が腫れている場合、体表から触ることができます。
<食欲不振・体重減少>
食欲低下が長期間続いたり、体重が減少したりする場合は、早めに詳しい検査を受けましょう。一般的に体重の10%以上の変動が見られれば、体重減少ととらえてよいでしょう(例:2.2kg→2.0kg)。
<元気消失>
いつもより元気がない場合は、体調不良の可能性があります。
<呼吸困難>
呼吸が早いと痛みや体調不良の可能性があります。
<皮膚の変化(皮膚型の場合)>
かゆみを伴わない脱毛やフケ、色素脱(鼻などの粘膜において皮膚が白くなる)が見られることもあります。
犬と猫の皮膚疾患|痒みや脱毛の原因と対策についてはこちらから
これらの症状が必ずしもリンパ腫を示すわけではありませんが、気になる症状が見られた場合は早めに獣医師に相談することをお勧めします。
リンパ腫の診断方法
身体検査や問診でリンパ腫が疑われた場合は、以下のような診断を行います。
<身体検査>
リンパ節の腫れや皮膚の状態に異常がないかを確認します。
<血液検査>
全身や臓器の状態を評価します。貧血、血小板減少、高カルシウム血症などが見られることがあります。
<画像診断(X線、超音波、CT、MRIなど)>
体表や体内のリンパ節の腫れや転移の状況を確認します。
<生検(病理検査)>
腫瘍の種類は針生検や組織の病理検査で確定します。
リンパ腫の治療方法
・化学療法:最も一般的で効果が見込める可能性が高いです。
・放射線療法・外科手術:局所に病変が限られている場合などに適応します。
・免疫療法:効果は緩やかですが、再発予防や進行を遅らせることを目的として実施されます。
・緩和ケア:より良い状態で最期を迎えられるよう、痛みやつらさを取り除く治療です。
リンパ腫の予後と生存率
治療を行わない場合は1〜2カ月で亡くなることが多く、治療が効果的であれば1〜2年生きる子もいます。また、リンパ腫は完治が難しい病気です。
予後は犬の年齢や症状、リンパ腫のタイプや悪性度など、さまざまな要因によって異なります。発症後はできるだけ快適な時間を過ごせるよう、獣医師とよく相談しながら治療に取り組むことが大切です。
リンパ腫の予防と早期発見の重要性
前述したように、リンパ腫を完全に予防することは困難とされています。しかし、早期発見によって、より良い予後が期待できます。そのため、日々の健康管理や定期的な検診を心がけることが重要です。
<定期的な健康診断>
半年に1回程度、定期的に健診を受けることで、早期発見につながります。
<日々の観察>
普段から愛犬の体を触ることで、リンパ節の腫れなどに早く気づくことができます。
<健康的な生活習慣の維持>
適切な食事、運動、ストレス管理により、健康のベースを維持しましょう。
まとめ
リンパ腫は完治が難しい病気ですが、早期発見と飼い主様が納得できる治療を行うことが最善の方法です。後悔しないためにも、気になることがあればすぐに獣医師に相談するようにしましょう。
大阪府貝塚市の動物病院「クローバー動物病院」
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