2025.07.15 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)|症状から治療まで獣医師が解説
最近、「愛犬の歩き方に違和感がある気がする」「片足を浮かせて歩いているように見える」と感じたことはありませんか?日常のちょっとした変化が、実は病気のサインである可能性もあります。
特に小型犬に多く見られる膝蓋骨脱臼(パテラ)は、進行すると痛みや歩行困難につながるため、早期発見と適切な治療がとても大切です。
今回は犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)について、原因や症状、治療方法、予防のポイントなどを解説します。
■目次
1.膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?
2.膝蓋骨脱臼の症状と見分け方
3.診断方法
4.治療方法
5.予防と日常生活での管理
6.まとめ
膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?
膝蓋骨とは、いわゆる「膝のお皿」と呼ばれる丸くて小さな骨で、太ももの筋肉(大腿四頭筋)から膝を通り、すねの骨にかけて連なる膝関節の中にあります。この膝蓋骨は通常、膝関節の中央にある「滑車溝」と呼ばれる溝に沿って上下に動くことで、スムーズな膝の曲げ伸ばしをサポートしています。
しかし、何らかの理由でこの膝蓋骨が溝から外れてしまうと、関節の動きが不安定になり、「膝蓋骨脱臼(パテラ)」と呼ばれる状態になります。
特に、トイプードルやチワワ、ポメラニアンなどの小型犬は、生まれつき滑車溝が浅かったり、周囲の筋肉や骨格のバランスに偏りがあったりすることで内側に脱臼しやすくなります。一方、中型犬や大型犬では、交通事故や高所からの落下など外的要因によって外側に脱臼するケースも見られます。
膝蓋骨脱臼の症状と見分け方
膝蓋骨脱臼は進行状態により、以下のように1~4までのグレードに分けられます。
<グレード1>
普段は膝蓋骨が正常な位置にありますが、外部から指で押すと外れる状態です。自然に元の位置へ戻りますが、スキップのような歩き方をすることがあります。
<グレード2>
犬自身の動作で膝蓋骨が自然に脱臼したり戻ったりを繰り返す段階です。歩行時に違和感が見られ、脱臼状態が長く続くと骨の変形が進行するおそれがあります。
<グレード3>
常に膝蓋骨が脱臼している状態です。指で押せば元に戻るものの、すぐにまた脱臼します。歩行に明らかな異常が見られ、足の骨が変形しているケースもあります。
<グレード4>
膝蓋骨が完全に脱臼しており、外部から押しても元に戻りません。足を地面につけずに浮かせたまま歩くことが多く、筋肉や骨にも重度の異常が見られます。
日頃から愛犬の歩き方や座り方、立ち上がる様子を観察することで、飼い主様自身でも初期の異常に気づくことが可能です。歩き方がいつもと違うと感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
診断方法
膝蓋骨脱臼を正確に診断するためには、以下のような検査を行います。
<触診>
膝関節を手で触って膝蓋骨の位置を確認し、外れやすさや筋肉の状態、痛みの有無などを確認します。
<歩行検査>
犬が歩いている姿勢や歩き方、立ち方などを観察し、膝蓋骨の異常が日常動作にどう影響しているかを確認します。
<レントゲン検査>
骨の形や関節の状態を詳しく確認するために行います。骨の変形や関節の異常の有無を可視化できるため、治療方針を決めるうえでも大切な検査です。
検査によって脱臼のグレードを正確に判断し、犬の年齢や体重、健康状態を総合的に考慮して治療方針を決定します。
治療方法
膝蓋骨脱臼の治療は、グレードや症状の程度によって選択肢が変わります。軽度の場合は経過観察で済むこともありますが、重度の場合は手術が必要になることがあります。
<内科的治療>
グレード1〜2で症状が軽度な場合は、関節の健康を保つサプリメントの摂取や、痛み止めの服用などを行いながら経過を観察します。体重管理や運動制限など、日常生活の中で関節にかかる負担を減らすことも大切です。
<外科的治療>
グレード3〜4のように常に脱臼している状態や、痛みや歩行障害が強く見られる場合には、外科手術が推奨されます。手術では滑車溝を深くしたり、靭帯のバランスを整えたりして膝蓋骨が正しい位置に戻るようにします。
ただし、手術には全身麻酔が必要となるため、犬の年齢や健康状態によっては注意が必要です。術後のリハビリや生活管理も重要なポイントになるため、獣医師としっかり相談しながら方針を決めていきましょう。
予防と日常生活での管理
膝蓋骨脱臼を予防するためには、関節への負担を減らす日常の工夫が効果的です。
<環境の整備>
フローリングなど滑りやすい床では、関節に余計な負担がかかりやすくなります。滑り止めマットを敷いたり、犬の足裏の毛をこまめにカットしたりするなどの対策をしましょう。
<体重管理>
肥満は膝関節に大きな負担をかける原因となります。適正体重を保つため、食事量の調整や適度な運動を意識しましょう。
<急激な動きを避ける>
階段の上り下りや高い場所からのジャンプは、関節への衝撃が強くなります。段差のある場所ではスロープを設置するなど、日常生活の中で無理な動きを避ける工夫が大切です。
また、症状がなくても、定期的に動物病院で健康診断を受けることで、初期の脱臼や関節の異常を早期に見つけることができます。
まとめ
膝蓋骨脱臼(パテラ)は、特に小型犬でよく見られる病気であり、進行すると痛みや歩行障害など日常生活に大きな支障をきたすことがあります。しかし、早期発見と適切な治療・予防を行えば、愛犬の快適な生活を保つことが可能です。
愛犬の「歩き方が気になる」「片足を浮かせていることがある」などの異変に気づいたら、迷わず動物病院に相談してください。
当院では、セカンドオピニオンをご希望の飼い主様もお気軽にご来院いただけます。大切なご家族の健康を守るパートナーとして、最適な治療と生活のケアを一緒に考えてまいります。
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