2025.02.03 愛犬や愛猫が中齢・高齢になったら|獣医師が教える観察ポイントと年齢とともに気をつけたい変化
愛犬や愛猫には、いつまでも元気で健康に長生きしてほしいと願うのは、飼い主様にとって当然のことですよね。しかし、中齢期から高齢期に差しかかると、これまでと違う身体や行動の変化が見られることが増えてきます。
一般的に、犬では7歳頃、猫では8歳頃から中高齢期とされ、この時期には代謝の低下や免疫力の低下、関節や内臓の疾患リスクが高まります。そのため、これまで以上に注意深い観察と健康管理が求められます。
今回は愛犬や愛猫の中高齢期に見られる身体や行動の変化、日々の観察ポイント、そして注意したい病気や健康管理の方法などについて詳しく解説します。
■目次
1.中高齢期に見られる身体の変化
2.日常生活での観察ポイント
3.中高齢期に気をつけたい病気
4.健康管理のポイント
5.快適な生活環境づくり
6.飼い主様ができるケア
7.まとめ
中高齢期に見られる身体の変化
中高齢期になると、犬や猫には加齢に伴う自然な変化が見られるようになります。例えば、動きがゆっくりになったり、視力や聴力が少し低下したりするのは正常な老化の一環です。
しかし、これらが極端に進行する場合や、痛みや不快感が伴う場合は病気のサインかもしれません。中高齢期の主な身体の変化としては以下が見られます。
<動きの変化>
加齢により、犬や猫は筋力が衰え、動きが鈍くなります。それにより、階段を上るのを嫌がったり、ジャンプを避けたりすることが増えることがあります。ただし、足を引きずる、歩き方がおかしい、関節をかばうような動きが見られる場合は、関節炎や神経の病気を疑う必要があります。
<食欲・飲水量の変化>
中高齢期になると代謝が低下し、食欲や飲水量が減ることがあります。これは通常の老化現象ですが、突然食欲がなくなったり、逆に飲水量が急増したりする場合は、腎臓病や糖尿病などの病気の可能性があるため注意が必要です。
<毛並み・被毛の変化>
加齢に伴い、毛が白くなったり、薄毛になったり、毛艶がなくなることがあります。ただし、これらの変化が急激に進行する場合や、皮膚の異常を伴う場合は、ホルモン疾患や皮膚病の可能性も考えられます。
<排泄習慣の変化>
中高齢になると、腎臓や膀胱の機能が低下し、頻尿や失禁が起こりやすくなります。一方で、膀胱炎や腎臓病が隠れている場合もあるため、排泄習慣の変化には注意を払いましょう。
<睡眠時間・パターンの変化>
加齢により、犬や猫は眠る時間が長くなる傾向があります。しかし、昼夜逆転や夜鳴きが見られる場合は、認知症や甲状腺機能の異常の可能性があるため、早めに動物病院で診察を受けることが重要です。
日常生活での観察ポイント
中高齢期の犬や猫の健康を守るためには、日々の観察が何よりも大切です。体調の変化に早く気付くために、以下のポイントに注意して日常のケアを行いましょう。
<体重管理と食事>
定期的に体重を測り、急激な増減がないか確認しましょう。特に中高齢期になると、一度にたくさん食べられなくなる子も増えます。その場合は、食事の回数を増やすなどして必要なカロリーを摂取できるよう工夫しましょう。
<運動量と休息>
体力や筋力が落ちてくるため、散歩の時間や運動量は犬や猫の状態に合わせて調整しましょう。無理をさせず、軽い運動を日常的に取り入れることが大切です。また、安心して休める静かなスペースを用意し、快適な睡眠環境を整えてあげましょう。
<室内環境の整備>
中高齢期の犬や猫は転倒やけがのリスクが高まるため、滑り止めマットを敷いたり、段差を解消したりするなどして安全な環境を作りましょう。また、トイレをアクセスしやすい場所に設置し、トイレの数を増やすことも有効です。
中高齢期に気をつけたい病気
中高齢期になると、以下のような病気のリスクが高まります。
<歯科疾患>
歯周病や口臭の悪化が見られることが多いです。
<関節炎>
特に犬で発症が多く、痛みや運動能力の低下を伴います。
<心臓病>
咳や運動時の息切れがサインになる場合があります。
<腎臓病>
多飲多尿や体重減少が初期症状として現れます。
これらの疾患はいずれも早期発見が予後を左右するため、定期的な健康診断を受けることが重要です。
健康管理のポイント
中高齢期の犬や猫の健康を守るためには、以下のポイントを押さえたケアが大切です。
<定期健康診断>
半年に一度の頻度で血液検査や超音波検査を受けることで、病気の早期発見に努めましょう。
<適切な食事管理>
シニア用フードを検討し、栄養バランスを最適化しましょう。
<歯のケア>
毎日のデンタルケアが歯周病予防に効果的です。
<ストレス管理>
飼い主様が穏やかに接し、リラックスできる環境を整えましょう。
快適な生活環境づくり
中高齢期には筋力の衰えや関節の弱化が進むため、生活環境を整えることで犬や猫が快適に過ごせるよう配慮しましょう。例えば、滑り止めマットの設置や段差を減らす工夫が転倒防止に役立ちます。また、空調管理にも注意し、暑さや寒さから守ってあげましょう。
飼い主様ができるケア
日々のグルーミングは、愛犬や愛猫とのコミュニケーションを深めるとともに、健康状態を確認する大切な機会です。ブラッシングでは被毛や皮膚の状態をチェックし、爪切りや耳掃除で爪の長さや耳の汚れを確認しましょう。ただし、これらを嫌がる場合は無理をせず、必要に応じて動物病院やトリミングサロンに相談することが大切です。
また、口腔ケアも大切です。歯周病は犬や猫に多い疾患の一つで、放置すると全身の健康に影響を与えることがあります。歯磨きは、ガーゼや専用の歯ブラシを使って優しく行い、無理をしない範囲で少しずつ慣らしていきましょう。デンタルガムや口腔ケア用品を活用するのも効果的です。
さらに、体を優しくなでたり、声をかけながらマッサージをすることでリラックス効果が得られ、体の異常を早期に発見する助けにもなります。お手入れ中にはたくさん褒めてスキンシップを取り、犬や猫が安心してケアを受け入れられるようにしましょう。
犬の歯磨きの仕方についてはこちらから
犬や猫の歯周病についてはこちらから
犬と猫の口臭についてはこちらから
まとめ
中高齢期は、犬や猫と飼い主様がこれまで以上に絆を深め、穏やかで幸せな時間を過ごす大切な時期です。小さな変化を見逃さず、定期検診や日々のケアを通じて、愛犬や愛猫が健康で快適なシニアライフを送れるようサポートしていきましょう。
大阪府貝塚市の動物病院「クローバー動物病院」
診療案内はこちらから